――1975年12月。東京のとある公共ビルの会議室で小さな催しが開かれた。
参加サークル数30余、動員人数約700。ファンによる集会にすぎなかったこのイベントは、回を追うごとに規模拡大の一途をたどり、いつしか日本全国のヲタが集まるヲタク最大の祭典になる。
独自の解釈で表現されたいろんな意味で犯罪、ないし、風俗営業スレスレのコスチュームプレイ撮影会がそこかしこで展開される。
世界的規模で見ても最っっともダメ人間達による、
世界的規模で見ても最っとも愛されてるイベント。
それが、コ ミ ッ ク マ ー ケ ッ ト。
通称、 コ ミ ケ 。
行列。
整列。
待機。
見渡す限りのヲタクたちが、さしたる混乱もなく整然と行列を作り、狂騒の幕開けを待ち続けている。
個々の自己管理によって限りなく平穏をよそおわれた欲望が、
欲望が、
欲 望 が っ !
開催の瞬間を待ち焦がれている。
外気温、5℃。
体感温度、実に38℃以上。
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